幸せごはん日記

日々のごはんと暮らしの記録

【読書感想】二度寝とは遠くにありて想うもの 津村記久子さん

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津村記久子さん 二度寝とは遠くにありて想うもの

2017.5.7読了 読書アプリにこつこつ残しているレビューをブログにものんびり移していきます。

 

 

内容(「BOOK」データベースより)

布団に感謝して話しかけたり、編み物で怒りを解消したり、「女子会」「いい年」「一人ごはん」「無縁死」といった言葉について考察したり…あの大人気エッセイがパワーアップしてかえってきた!もっと笑えて泣けて唸らせられる、唯一無二の脱力エッセイ第二弾。

Ⅰ となりの乗客の生活 Ⅱ 現代のことばについて考える Ⅲ 溺れる乗客は藁をもつかむ Ⅳ 素人展覧会< Ⅴ ソチとブラジル、その鑑賞と苦悩 amazon内容紹介より抜粋

 

レビュー

 

 

寝る前にこつこつと少しずつ読みすすめました。北大路公子さんや三浦しをんさんのようなゆるゆるでくすりと笑えるエッセイだと思っていたのですが、そんなふうなお話以外にも考えさせられるお話もあったり。
 
例えば「一人でごはんは不幸すか?」
 
ひとりでごはんを食べること。
 
はじかれることはない、自分を受け入れてくれていると確信のもてる家族や、何十年もつきあってきた学生時代からの気ごころの知れた友達とのつかずはなれずの心地よいおつきあいの中にいられる今でこそ、ひとりでごはんを食べることって大好きって言えるけれど、学生時代や会社員時代、結婚してお母さんになってからもママ友との関係性の中にいるときは、その中に入れずひとりでごはんを食べなくてはいけないってことが恐怖の対象になっていたっけなと思い出します。
 
津村さんの言葉は淡々としていているのですが、物事の細部まで見つめていて、あたたかいんだけれどどこか冷めた目線で観察されているようにかんじます。
 
 

幸せになれないということ

 

職場でパワハラに遭ったことのある津村さん。

 

さてこの図式において、「必要としている」側はどちらか。パワハラ主である。パワハラをする人は、パワハラをする相手を必要とし、依存している。

 

一方、パワハラをされる人は、パワハラをする人なんかまったく必要としていない。ある種の歪んだ片思いである。

 

おなじように、いじめをする人は何よりもいじめる相手に依存している。自分自身だけで満足できる(自足)ことを捜す能力がなく、常に他人を必要とするわりに、他人に対して不自由なほど神経質である。

 

「気に入らないこと」への感度ばかりが鋭く、それをどう動かすかに執着している。また、「どうにもならないこと」への耐性も低く、他人に当たることでしかそれをやり過ごせない。

P27~28 幸せになれないということより抜粋

 



津村さんはこう結んでいます。

 

いじめをすることから脱せない人は、ろくな人生を送れない、と断じるのではない。ずるく立ち回ってうまくやる人だっているだろう。ただ、ろくな人生を送っても、心底は満足できない。

周囲の人を無為に傷つけ、満たされることは永遠になく壊れたラジオのように「気に入らないこと」を受信し続ける。死ぬまで。これをおそらくは不幸という。

 

こういうものの見方ってはじめて読んだような。そういわれてみれば本当にそうだなとハッとする思いでした。

 

考えさせられるところばかりを書きましたけれど、布団が好きすぎてとうとう布団に話しかけるようになったお話とかクスっと笑えるエッセイもたくさんあってバラエティ豊か。いろいろな思いをもてて楽しく読みました。